内縁(事実婚)の相手に財産を譲る遺言書

遺言書-夫婦

たとえ何十年一緒に暮らしていたとしても法律上婚姻関係にないと相続権はありません。

ご事情があって籍を入れていない方もたくさんおられると思います。

ご自分が亡くなったあと、大切な相手が住み慣れた家で暮らせるよう、不自由な生活を送ることのないよう財産を残しておきたいと思われる方も多いのではないでしょうか。

そんな時、遺言書を書くことにより内縁の相手にも財産を譲ることができます。

なお、内縁の相手との間に子がおりその子を認知している場合は子は法定相続人になります。

内縁の相手に遺言書を書いて財産を遺贈する時次の4つに注意して作成するようにしましょう。

 

1.遺留分に注意する

被相続人(遺言書を書く人)に法定相続人がいた場合、遺留分を請求される可能性があります。

遺留分とは法定相続人が最低限度受け取れる財産の割合のことです。

たとえ遺言書があったとしても遺留分の請求があると、ある一定額の財産は相続人のものになります。

 

ケース1. 被相続人に子がおらず両親がご存命であった場合

遺留分・不動産が2,000万円

・預貯金が4,000万円

相続財産額が6,000万円

だった場合、

父と母の相続財産は3,000万ずつ、

遺留分はその1/3の1,000万ずつになります。

 

遺留分を請求されると、たとえ遺言書があったとしてもその分を渡さなければいけません。

なので遺留分に配慮した遺言書を作成するようにしましょう。

対策としては

・付言を記す

・生前贈与がないか検討する

などがあげられます。

 

 

ケース2. ご両親は他界、内縁の妻との間に認知した子がいる場合

この場合、子供が単独で相続します。

もし被相続人に離婚歴があり、前妻との間に子供がいた場合、その子供も相続人となります。

もし現在認知してる子が2人おり、前妻との間にも子がいる場合、

・不動産が2,000万

・預貯金が4,000万

相続財産額が6,000万円

子供3人で2,000万ずつになります。

子ども一人あたりの遺留分は1,000万です。

 

遺留分

 

・一人が不動産を単独で所有する

・何人かが不動産を共有し、現金を分ける

この2つの状況が発生しそうです。

ちなみに被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。

このように状況により相続人、相続財産額を調べ配偶者に残す遺言書の内容を検討します。

 

ちなみにこの遺留分を支払う必要があるのはあくまで法定相続人による「遺留分侵害額請求」があった時のみです。

請求がなければ支払う必要はないよ

 

2.遺言執行者を指定しておく

被相続人が亡くなったあと、預貯金の解約手続きや不動産の名義変更で被相続人の戸籍謄本が必要になったり場合によっては被相続人の法定相続人の協力が必要なケースもあります。

第三者である内縁の妻が被相続人の戸籍を取得したり、前妻の子である法定相続人と直接やり取りをし手続きを進めるのは困難が予想されます。

法定相続人によっては親族ではない第三者が財産を受け取ることにおもしろくないと感じ非協力的な人もいるかも知れません。

このような場合、遺言書で「遺言書執行者」を指定しておくといいでしょう。

遺言執行者は被相続人の

・財産の処分

・相続手続き

を単独で行うことができます。

相続人へ遺言執行者に就任したことなどを通知する義務がありますが、たとえ相続人の協力が得られなかったとしても基本単独で遺言執行を行うことができます。

遺言執行者はこの財産を受け取る内縁の相手でもなることができますが、手続きには専門の知識も要するので士業などの専門家を指定しておくとより安心です。

受取る人のことも考えた遺言書を

遺言執行者とは

遺言執行者

3.公正証書で作成する

内縁の相手など相続人ではない第三者へ財産をゆずる場合、そのことに不満を持っている相続人がいれば内縁の相手との間でトラブルになる可能性があります。

公正証書遺言で作成しておくことで、遺言の真偽が争われたとしても公証人や証人により遺言書の存在や内容が真実であることが確認されていますので安心です。

 

4.包括遺贈と特定遺贈

遺言により財産を他の人に与えることを「遺贈(いぞう」といいます。

遺贈には大きく分けて、「包括遺贈」(ほうかついぞう)「特定遺贈」(とくていいぞう)の2種類があります。

「包括遺贈」とは財産の全部または一定の割合を指定する遺贈です。

「特定遺贈」とは○○銀行○○支店口座番号○○○○○○など特定して行われる遺贈です。

この包括遺贈と特定遺贈には3つの大きな違いがあります。

内縁(事実婚)の相手に財産を譲る遺言を書く場合、包括遺贈と特定遺贈に注意して作成する必要があります。

 

包括遺贈と特定遺贈に違い その① 債務

特定遺贈の場合、受遺者(遺産を受取る人)は特定の遺産を受け取るのみですが、包括遺贈の場合、「相続人と同一の権利義務を有する」とされています。

ということは、遺言者に借金などマイナスの財産があった場合、その債務も引き継ぐことになります。

したがって、包括受遺者は遺贈を受ける財産と遺言者の残した借金などの債務を比較したうえで、遺贈を受けるか否かを判断しなければなりません。

 

包括遺贈と特定遺贈に違い その② 放棄

包括遺贈と特定遺贈では、放棄の方法が異なります。

特定遺贈では遺贈を受ける人がいつでも遺贈の放棄ができるとされています。

放棄に別段の定めがあるわけではなく、口頭でもよいとされています。

一方、包括遺贈では受遺者は相続人と同等の権利義務を有するので、通常の相続放棄と同じく包括遺贈があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。

 

包括遺贈と特定遺贈に違い その③権利の帰属

特定遺贈では相続開始(遺言者の死亡)と同時にその遺贈の対象となる財産の権利が受遺者に帰属します。

しかし割合的包括遺贈(相続財産の1/2や30%など割合の指定)では、どの遺産を取得するのか決まっていないので、他の相続人や受遺者との間で遺産分割協議をすることになります。

よって遺産分割協議がまとまるまで、遺贈を受けることができません。

このように、内縁(事実婚)の相手に財産を譲る遺言を書く場合、包括遺贈と特定遺贈に注意して作成する必要があります。

ちなみに、受遺者は遺言者の死亡時に生存していなければ遺贈の効力はないとされています。

 

また包括遺贈、特定遺贈とは別に、「負担付遺贈(ふたんつきいぞう)」と呼ばれるものもあります。

これは○○という負担をお願いする代わりに●●をあげるというものです。

「例えばペットの面倒を見てもらう代わりに300万を遺贈する」などですね。

 

犬

 

まとめ

法律上婚姻関係にないと、遺産を相続できないだけでなく事故や病気になった時の身元保証人や死後の手続きが行えないなど難しい状況に直面することも少なくありません。

その対策として事前に「任意後見契約」や「死後事務委任契約」も検討し、必要があればパードナーシップ合意契約書など作成しておきましょう。

→任意後見契約とは

→死後事務委任契約とは

 

 

気持ちの伝わる遺言書を
遺言書に書いて効力があるものは法律で決められています。

しかし法的な効力はなくても遺された方へのメッセージとして遺言書に「想い」を記しておくことはとても大切です。

遺された人たちはどうしてあなたがそのような内容の遺言書を書いたのか理解することができ、あなたの気持ちに寄り添うことでその遺言の内容を受け入れやすくなります。

またあなたの「想い」を知ることで相続人同士の不要な争いを避けることができます。

「死」という悲しい出来事がおきた最中にある相続。

少しでも遺された方があなたの思いに寄り添い、あなたの想いを受け止め、前向きに生きていける遺言になればと思います。
 
 
 

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