遺言書が無効となる9例/遺言を無効・取消にする方法
遺言書は決められた方式で作成する必要があり、不備などにより無効となってしまうケースもあります。
せっかく作成した遺言書が無効とならない為にどういった内容で無効となるのかについてみていきましょう。
1.遺言能力がない
これが遺言書の有効・無効の争いになる一番多い原因ではないでしょうか。まず、大前提として遺言書が「本人の意思・希望で」書かれている必要があります。
よって遺言書の内容を理解するための「遺言能力・意思能力」が必要です。
度々相続争いになり遺言者の遺言能力が争われる例として認知症などにより判断能力がないことなどがあげられます。
しかし認知症と診断された場合、絶対に遺言書を作成できないわけではありません。
一時的に判断能力が回復している時に医師の立会のもと作成できるケースもあります。
この場合公正証書で作成することが望ましいです。
遺言能力が疑われないように遺言書作成時の様子(生活環境も含め)を動画に残しておくことや、医師の診断書などを残しておきます。
2.本人の意思により書かれたものではない
遺言書が脅迫などにより書かれたもので、本人の意に反して作成されたものは無効となります。
また騙されたことにより、錯誤に陥らせ書かれた遺言書も無効となります。
3.日付の記載がない
日付の記載がない場合も無効となります。
作成年は西暦でも和暦でも構いません。
○○年○月○日と日付まできっちりと記載しましょう。
○○年○月吉日など日にちが特定できない場合は無効となる場合があります。
4.自筆で作成していない
自筆証書遺言は全て自筆で書く必要があります。
他の人が代筆したものやパソコンやワープロで書かれたものは無効となります。
2020年の法改正により財産目録は預貯金の通帳のコピーなどでも可能となりました。
5.署名、押印がない
自筆証書遺言では遺言書、財産目録すべてに署名・押印が必要になります。
財産目録は目録が複数枚にわたる場合は全ページに署名と押印が必要となりますのでご注意下さい。
6.加除訂正の方法が間違っている
遺言書には法律で決まった加除訂正の方法があります。
正しい加除訂正の方法でされなかったものはその効力が生じません。
7.遺言書が複数ある
遺言書が複数ある場合、ただちに遺言書が無効となるわけではありません。
日付の新しいものが優先されるのですが、前のものと内容が抵触する箇所は新しい遺言書が優先されます。
新しい遺言書に記載がなく、前の遺言書のみに記載のある内容に関しては古い遺言書が有効となります。
複数の遺言書がある場合、新しい遺言書によって変更された箇所のみ古い遺言書の内容は無効となります。
8.遺言者が15歳未満
民法961条「15歳に達した者は、遺言をすることができる」と明記されています。
よって15歳未満の者は遺言をすることができません。
9.被後見人による遺言
被後見人とは判断能力が低下しているため、本人に代わって財産の管理や身の回りのことをしてくれる「後見人」という、いわば保護者のような人がいる人のことをいいます。
後見人は後見事務を行う上で財産の管理や計算を行います。
後見人が後見人としての任務終了後にその財産管理の計算を行う前に、被後見人が後見人や後見人の配偶者、直系尊属の利益を与えるような遺言をしても、その遺言は無効となります。
しかし、この規定は後見人が被後見人の直系血族や配偶者、兄弟姉妹の場合は適用されません。
遺言を取消・無効にする方法
生前の場合
遺言者がご存命の場合、前の遺言書を破棄する、または新しく遺言書を作成することによって前の遺言書を無効とすることができます。
ご逝去後
遺言者の死亡後、相続人全員と、受遺者がいる場合はその受遺者を含め全員の合意があれば遺言内容とは違う遺産分割を行うことも可能です。
遺言無効確認訴訟
気持ちの伝わる遺言書を
遺言書に書いて効力があるものは法律で決められています。
しかし法的な効力はなくても遺された方へのメッセージとして遺言書に「想い」を記しておくことはとても大切です。
遺された人たちはどうしてあなたがそのような内容の遺言書を書いたのか理解することができ、あなたの気持ちに寄り添うことでその遺言の内容を受け入れやすくなります。
またあなたの「想い」を知ることで相続人同士の不要な争いを避けることができます。
「死」という悲しい出来事がおきた最中にある相続。