医療についての希望を残す~事前指示書(延命治療)・尊厳死宣言書とは
医療についての希望を残す重要性
「どのような治療を望むのか」
その意思決定は本人がすべきです。
しかし終末期には意識を消失していたり、意思を伝えられなくなっている可能性もあります。
そういった時に備えあらかじめ希望を書いて残しておきます。
この「もしもに備えて」残す希望の内容は大きく分けて次の2つに分けられます。
1.事前指示書(治療の希望)
治療について希望する、希望しないをわかるように記しておきます。
また認知症になった時など、どこで暮らしたいのか、どこでどんなサービスを受けたいのかなど介護に関することもを記しておきます。
2.尊厳死宣言書(リビングウィル)
回復の見込みがなく、ただ命を延ばすためだけの延命治療は望まないことなどを記します。
順に詳しく見ていきましょう。
医療・治療方針の決定
厚生労働省の発表した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」によると、医療・ケアの方針の決定について、本人の意思が確認できる場合には医療従事者から適切な情報の提供と説明があった後、本人による意思決定を基本とするとしています。
では本人の意思が確認できない場合はどうなるのでしょうか。
そのような場合には次のような手順により医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要があるとしています。
1.家族等が本人の意思を推定できる場合
その推定意思を尊重し、本人に とっての最善の方針をとることを基本とする。
2.家族等が本人の意思を推定できない場合
本人にとって何が最善である かについて、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、本人にとっての 最善の方針をとることを基本とする。
時間の経過、心身の状態の変化、医学的 評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。
3. 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合
本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
4.このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくも のとする。
としています。
ご自身の意思を表示できない場合、ご家族や医療・ケアチームが判断をすることになり、判断をする側は難しい決断を迫られることになります。
そういった病気や事故で意志表示ができなくなった場合に備えて以下のような方法があります。
事前指示書(治療希望書)
尊厳死宣言書は回復の見込みがない時に、「死」への希望を残すのに対し、回復の見込みがあるけれども、病気やケガで自分の意思を伝えることができない時に、治療の希望を伝えるために残しておく「治療希望書」があります。
治療希望書には決められた書式はなく、インターネットで病院などから公開されている雛形があるのでそれらを参考にしながら自分の希望を残しておくといいでしょう。
作成したら、「もしもの時」に他の人にわかるように託しておくか、保管しておきます。
この治療希望書は尊厳死宣言書とは異なり、一般的には公正証書にはせず、作成さえrている方が多いのではないでしょうか。
尊厳死宣言書
「尊厳死」とは
延命治療とは病気の根治ではなく、延命を目的とする治療のことをいいます。
そして尊厳死とは回復の見込みがない時に延命治療は行わずに自然な状態で死を迎えることをいいます。
意識がなく、回復の見込みがないのに、ただ人工呼吸器につながれているだけの状態。
こういった延命は苦痛を長引かせ、家族の負担も増え、医療費の負担もかかります。
最近ではそういった、ただ命を延ばすだけの治療は望まないとう方が増えてきています。
尊厳を保ちつつ最期のときを迎えることをいいます。
「尊厳死宣言書」とは
病気が不治かつ末期の状況で、治る見込みがない場合、これ以上ただ命を伸ばすだけの延命治療はしないで下さいという希望を伝えるため文章として残しておくものです。
治療の決定に関しては本人の意思が優先されますが、事故や病気等の状況により、ご自身の意思を表示できない場合があるかもしれません。
そんな時に文書にして残しておくと、本人の意思を医師や医療従事者に伝えることができます。
尊厳死宣言書には法的拘束力はありません。
しかし公正証書で作成しておくことにより、実際の現場では本人の意思が尊重されることが多いようです。
公正証書にする費用は公証役場への手数料が11,000円、正本代750円が必要となります。
終末期になれば、延命治療に関する選択を迫られることになります。
医療機関側としてはその判断により家族とトラブルになる可能性があるのでその決定は難しいものとなります。
家族としても延命をするにしても、しないにしてもその決断にかなりの精神的負担を感じます。
周りの人たちのためにも希望を残しておくことは、優しいことです。
尊厳死宣言書の記載内容
尊厳死宣言書に記載される内容は次のようなものがあります。
ご自身で希望される内容で作成すると良いでしょう。
・尊厳死を希望していること
・苦痛を和らげる治療は最大限にしてもらいたいということ。
・治る見込みがない場合、ただただ延命する為だけの治療はしないでもらいたいこと。
・尊厳死を望む理由
・家族の同意
・医療関係者への免責
・効力について
尊厳死宣言書と家族
もし自分はただ命を延ばすだめだけの延命治療は希望しないとしていたとしても、ご家族が延命治療を受けることを希望したらどうなるのでしょう。
この場合、医療関係者はご家族の希望を尊重します。
よって尊厳死宣言書を作成する場合、ご家族の同意を得ておくことが望ましいでしょう。
尊厳死宣言公正証書の作成方法
遺言相続を専門におこなっている、弁護士や司法書士、行政書士のサポートを受け作成することができます。
作成時の報酬は一般的には司法書士や行政書士に比べ弁護士が割高だと思います。
またご自身で直接公証役場に出向き作成することもできます。
自身で公証役場に行って作成する場合は、事前に必要な書類を最寄りの公証役場に確認するようにしましょう。
一般的には、ご本人確認書類+印鑑が必要となります。
まとめ
自分の身体、命のことなので、出来るだけ自分の意思で決めたいですよね。
いつなんどき何がおこるかわからないので、簡単にでもご自身の希望を残しておくことは安心となるのではないでしょうか。