遺言書の効力とは~どんなことに法的な効力があるのか

遺言書に書いて効力のあることは法律で定められています。

ではいったいそれらはいつから効力が発生するのでしょうか。

民法第985条(遺言の効力の発生時期)

1. 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

2. 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

 

原則として、遺言者が死亡した時点から効力が発生します。
効力発生時期

よって遺言書を書いた後、遺言者がなんらかの財産の処分をしたとしても、死亡時にある財産にのみ効力を持ちます。

つぎに、停止条件をつけた場合、遺言者の死後、その条件が成就した時からその効力が生じます。

例えば「長男が20歳になった時に相続させる」などですね。

 

法的に効力があるもの

つぎに、遺言書には何を書いても構いませんが、書いて法的に効力があるものとはどんなものがあるのでしょう。

 

大きく分けて「財産に関すること」「身分に関すること」の2つに分けられるよ

 

1.相続分の指定とその委託

民法第902条

  1. 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
  2. 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

 

相続分の指定とは相続分の数的割合による指定方法です。

相続人の全員または一部の人に対して3分の1とか60%とか相続分の数的割合を定める方法です。

例えば長男に3分の1、次男に3分の2相続させるなどですね。

数滴割合における分割そして第三者にその指定を委託することができますがその「第三者」とは実務上相続人や受遺者など相続に関係しない者が望ましいとされています。

遺言書で第三者に指定された者はその指定を拒否することもできます。

相続分の指定

なお、相続分の指定があれば相続人は積極財産だけではなく、相続債務も指定された割合に応じて承継すると解されています。

2.遺産分割方法の指定とその委託、遺産分割の禁止

民法第908条
  1. 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
  2. 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。 ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 

遺産分割方法の指定とは誰にどの財産を相続させるのか指定することです。

例えば長男に不動産を相続させ、二男に預貯金を相続させるなどです。

相続分の指定の委託を受けた者は法定相続分の割合による分割方法の指定を行わなければならないと解されています。遺産分割指定

また遺言により遺産分割を禁止する場合、禁止期間は最大で相続開始のときから「5年」です。

もしその指定期間が5年を超えている場合、5年の期間に限り効力が認められます。

それから相続手続きで遺産分割協議を行うケースでは、相続人の中に未成年者がいる場合その未成年者のために特別代理人を立てなければばりません。

その為当該未成年者が成人になるまでなど遺言書内で遺産分割が禁止されるケースがあります。

 

指定分割とは
指定分割とは遺言書内で誰(人、法人、団体など)に財産(特定の財産)を相続させる(遺贈する)と指定することによって遺産を分与することができます。例えば相続人は配偶者と兄弟姉妹で、今住んでいる家を配偶者の妻に相続させたい場合、「妻に相続させる」とその指定をすることができます。

 

3.遺言執行者の指定とその委託

民法第1006条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

遺言執行者とはその遺言書内に書かれていることを遺言者の死後、実現する人のことです。

未成年者または破産者以外の人がなることができます。

遺言執行者が必要なケースとして「子の認知や推定相続人の廃除を行う場合」、「一般財団法人を設立する場合」などがあげられます。遺言執行者

4.祭祀承継者の指定

民法第897条
  1. 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

 

一般的に祭祀財産に関しては慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継しますが、その承継者の指定を遺言によって行うことができます。

祭祀財産は相続財産とならないので遺言書で「全ての財産を長男に相続させる」としても長男が祭祀承継者になるとは限りません。希望がある場合は遺言書内で指定しておくようにしましょう。

祭祀財産

5.特別受益持ち戻し免除

第903条
  1. 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
  2. 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
  3. 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
  4. 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

 

「特別受益」とは婚姻や養子縁組、生計の資本として遺贈や贈与によって受けた特別な利益のことです。

もし相続人の中に、生前に被相続人から特別な利益を受けた者がいれば他の相続人との間で不公平が生じます。

この不公平を是正するために、通常相続手続きではこの特別受益を遺産に加算して相続分を算出します。

しかし遺言書でこの特別受益の持ち戻し(加算すること)を免除すると意思表示があれば加算しないことになります。

ただし持戻し免除の意思表示は他の相続人の遺留分を侵害しない範囲でなされなければなりません。

そしてこれは「遺産分割協議」では有効ですが、遺留分の計算をする時は無効となります。

また2019年7月1日より婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅の贈与または遺贈があった場合、特別受益の持ち戻し免除の意思表示があったものと推定するとなりました。

特別受益

 

 

6.相続人の廃除や廃除の取消

第893条被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

推定相続人の廃除は、遺言書に記載することによっても行うことができます。

その場合、

①被相続人に対する虐待

②被相続人に対する重大な侮辱

③推定相続人の著しい非行

のいずれかに該当することが必要です。

 

推定相続人の廃除を行う場合、家庭裁判所に相続人廃除の申し立てを行うことになります。

そして申し立てが認められるためには廃除事由に該当することを立証しなければなりません。

そのため遺言書には具体的にどのような理由で廃除したいのか明確に記し、それを根拠付ける資料を添えておくことが重要です。

また遺言執行者を指定し、事前にしっかりと託しておくことも重要です。

しかしその立証はかなり困難を伴うことが予想され、実際に申し立てが認めらるのはごくわずかというのが実情です。

家庭裁判所より廃除の請求が認められるとその相続人は遺留分の請求もすることができません。

相続人の廃除が認められると、廃除を受けた人の戸籍には推定相続人廃除の記載がされます。

 

また、そもそも廃除をするまでもなく、相続人の欠格事由として次のものがあります。

・わざと被相続人や他の相続人を殺したり、殺そうとして罪を受けた人

・被相続人が殺されたことを知りながら、犯人を告発・告訴しなかった人(小さい子供で良いことと悪いことの分別がつかない場合を除きます)

・被相続人を騙したり、脅したりして遺言を書かせたり、また遺言を撤回させたり、取り消させたり、変更させたりした人

・被相続人の遺言を偽造、変造、破棄、隠匿した人

 

これらに該当する場合、自動的に相続人ではなくなります。

 

7.遺留分侵害額の負担順序の指定

民法第1047条
  1. 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
    1. 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
    2. 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
    3. 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。

 

遺留分の侵害があればその侵害された者は遺留分侵害額の請求をすることができます。

そして民法上、遺留分の負担の順序は、

1.遺贈(受遺者)が先

2.その次に生前贈与(受贈者)

と定められています。

 

そして同一順位の相手方が複数いる場合、(複数の遺贈、同時受贈)基本的にはその目的の価額の割合に応じて負担しますが、遺言書によってその負担する順位を変更することもできます。

 

負担順位

8.相続人相互間の担保責任の指定

第911条(共同相続人間の担保責任)

各共同相続人は他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う

第912条(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任)

  1. 各共同相続人はその相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
  2. 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については各共同相続人は弁済をすべき時における債務者の資力を担保する

第913条(資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担)

第914条(遺言による担保責任の定め)

前三条の規定は被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは適用しない

 

ある相続人が相続するとなっていた財産の価額が問題や欠陥があって、当初予定してい額より少なかった場合、その不足分に関して各相続人が相続分に応じて負担することになります。

例えば長男が土地100坪を相続するはずだったけれど、実際には95坪しかなかった場合などです。

その相続人間の担保責任(だれがその損害分を負担するのか)について遺言で定めておくことができます。また「担保責任は負わないものとする」と遺しておくこともできます。

 

9.財産の遺贈

民法第964条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

遺贈とは遺言により財産を相続人ではない第三者や法人に与えることです。

遺贈には遺産の全部又は一定の割合で示された部分を与える「包括遺贈」と特定の財産を与える「特定遺贈」があります。

包括遺贈の場合、相続人と同一の権利義務を有します。

したがって遺言者の一身に専属していたものを除き、相続人と同様債務も承継します。

遺言で財産を遺贈される者を「受遺者」と言いますが、受遺者が遺贈の承認または放棄をしないで死亡した時は、相続人が自己の相続分の範囲内で承継または拒否することができるとされています。

遺贈

遺贈は一度承認または放棄すると原則として撤回することができません。

10.財産の寄付

自分の亡くなった後、社会貢献として自分の財産を何かに役立てて欲しいと遺言を遺したいという方がいらっしゃいます。

とっても素敵なことですよね。

遺遺言による寄付のことを「遺贈寄付」といいます。

遺言で不動産や株式を遺贈寄付する場合、登録免許税やみなし譲渡課税などの税金がかかる場合がありますのでその方法に注意が必要です。

また遺言書内で遺言執行者も指定しておいた方がいいでしょう。

そしてもう1つ、死後に寄付する方法として「死因贈与契約」があります。

遺言は遺言者のみでできる単独行為なのに対し、死因贈与契約は相手方との同意により成立します。

遺言により寄付の意思表示をしていた場合でも、相手方はそれを拒否することもできます。

寄付

 

11.信託の設定

信託とは自己の財産を誰かに管理、運用してもらい、その利益をほかの人が受け取るとする行為です。

例えば遺言書で信託を設定する場合、子どもが成人になるまで誰かに財産を管理、運用してもらいその利益は子が受け取るというものです。

これによって子供の生活を保護することができます。

家族信託

12.一般財団法人の設立

遺言で一般財団法人設立の意思を示し、定款で記載すべき内容を遺言で定めます。

設立手続きは遺言執行者が行います。

もし遺言書内で遺言執行者を指定していない場合は相続人が家庭裁判所へ遺言執行者選任の請求をしなければなりません。

 

13.保険金受取人を変更する

遺言で、保険金の受取人を変更することができます(保険法第44条第1項、第73条第1項)。

ただし、相続人が遺言書を見るまでは誰にも伝わらないため、保険会社や契約上の受取人を巻き込んだトラブルになる可能性がありますので注意が必要です。

また保険会社との契約の約款に遺言による内容が明記されている場合もありますので遺言に残す場合は事前に保険会社に確認しておいた方がいいでしょう。

 

14.子の認知

法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子については法律上の母親は出産により確定します。

父親の場合、法律上の父親を確定するには認知という手続きが必要です。

認知を受けた子は子としての法律上の権利義務が生じ相続人となります。

この認知を遺言により行うことができます。

子の認知

15.未成年者の後見人・後見監督人の指定

民法第839条1項
未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。
ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。

 

例えば離婚をした夫婦はどちらか一方が子の親権者となります。

そしてその親権者となった者が亡くなった場合、もう一方に自動的に親権がうつるわけではありません。

この場合、親族などが裁判所に対して未成年後見人の申立を行うことになります。

そこで遺言で未成年後見人の指定をしておいた場合、その指定された者が未成年後見人となることができるので自分の死後も自分の希望する者に子の世話を託すことができます。

なお、未成年後見人の職務を監督するものとして未成年後見監督人の指定ができます。

未成年後見人 封筒書き方

 

まとめ

遺言書に書いて効力があるものはたくさんあります。

それぞれ注意点もあるのでトラブルにならないきちんとした遺言書を遺す為にも一度専門家にご相談されることをおすすめします。

遺された大切な方の為に是非「想いのこもった遺言書」を作成して下さい。

気持ちの伝わる遺言書を
遺言書に書いて効力があるものは法律で決められています。
しかし法的な効力はなくても遺された方へのメッセージとして遺言書に「想い」を記しておくことはとても大切です。
遺された人たちはどうしてあなたがそのような内容の遺言書を書いたのか理解することができ、あなたの気持ちに寄り添うことでその遺言の内容を受け入れやすくなります。
またあなたの「想い」を知ることで相続人同士の不要な争いを避けることができます。
「死」という悲しい出来事がおきた最中にある相続。少しでも遺された方があなたの思いに寄り添いあなたの想いを受け止め、前向きに生きていける遺言になればと思います。

 

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