遺言書の内容を変更したい・取り消したい時の方法
遺言の内容を変更したい
遺言書を作成した後でも遺言者の死亡前はその遺言の内容に関して何ら効力はありません。
例えば、
『不動産を長男に相続させる』
と遺言書に書いたとしても、遺言者の生前は長男にその不動産に対して所有権やいかなる権利もありません。
もちろん長男が単独で売ることや貸すこともできません。
また遺言に不動産は長男に相続させると書いたとしても遺言者は生前その不動産を自由に貸したり売却したりすることもできます。
遺言書を書いた当初より状況の変化があったとしても遺言の内容が実現されないだけで遺言書自体が無効となるわけではありません。
そして遺言書の内容を変更したい時、何度でも書き直したり、また完全に破棄して取り消すこともできます。
その遺言内容は撤回したものと見なされることになります。
1.方式は自由
遺言の方式は自筆証書遺言で作成していたものは必ず自筆証書遺言で変更しないといけないわけではありません。
公正証書遺言など別の方式の遺言によっても変更を行うことができます。
その時は変更された部分に関してのみ後の日付の遺言が優先されます。
変更していない箇所に関しては前のものが有効となります。
ややこしいと思われる場合は一度破棄して新しく作成し直すことをおすすめします。
2.変更方法
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言で作成された遺言内容を変更する場合、法律で決められた加除・訂正の仕方に従って行います。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言の場合は公正証書で変更したい場合は原則として公証役場に出向いて一から作成し直します。
この場合公証役場に支払う手数料と証人二人の立会、印鑑証明が必要になります。
公正証書遺言が2通あると思われるかもしれませんが、日付の新しいものが有効となります。
また新たに自筆証書遺言など別の方式の遺言書を作成し、変更することもできます。
部分的に撤回・変更するのであれば「令和3年4月26日作成の遺言書中、第三条 不動産を長男に相続させるとあるのを第三条全文を削除し撤回する」のように記載します。
3.全てを撤回する場合
自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、破いたりして破棄します。
公正証書遺言の場合、公証役場に出向いて破棄の手続きをします。
または新たに遺言書を作成することによっても、前の遺言を破棄することができます。
遺言の内容を取り消したい
遺言書は何度でも取り消すことができます。
遺言書を書いたあと、その内容を変更したい、または取り消したいと思うことがありますよね。
遺言書を書いたけどその内容を取り消したい時、それぞれの方法をお伝えします。
自筆証書遺言で遺言書が手元にある時
遺言書を破棄するのが最も手っ取り早い方法です。
また新たに遺言書を作成し、その内容の一部または全部を撤回する内容にすれば後に作成した遺言により前の遺言の内容は取り消されたことになります。
その際には遺言書に日付を書く事を必ず忘れないようにして下さいね。
自筆証書遺言で遺言書が手元にない時
この場合、遺言書を破棄することができません。
よって新たに遺言書を作成して前の遺言の内容を取り消します。
この時、自筆証書遺言で作成したがその後、手が不自由になったなどの理由により遺言書を自分で書く事が出来なくなった場合などは公正証書遺言によっても撤回することができます。
自筆証書遺言を法務局で保管している時
自筆証書遺言を保管している法務局で保管の撤回の申請をします。
申請できるのは遺言者本人に限られます。
また保管の撤回の請求には費用はかかりません。
STEP.1 撤回書を作成する
撤回書は法務局のHPからダウンロードできます。
保管の撤回の請求には費用はかかりません。
また最寄りの法務局の窓口で入手することもできます。
STEP.2 撤回の予約をする
遺言書を保管している法務局で予約をします。
予約は法務局のホームページもしくは電話や窓口でも行うことができます。
予約を行うことができる期間は30日先までです。
STEP.3 遺言書保管所に行き、撤回の手続きを行う
予約をした日時に必要書類を持参します。
・撤回書
・顔写真つきの官公署から発行された身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
公正証書遺言を取り消したい時
公正証書で作成した遺言書は遺言者の手元にある遺言書を破棄したとしても原本が公証役場にあるので遺言書を破棄(撤回)したことにはなりません。
この場合、新しく前の遺言を撤回するという内容の遺言書を作成し、遺言の撤回をします。
公正証書遺言の取消は公正証書遺言によっても自筆証書遺言によっても行うことができます。
公正証書遺言で行う場合、費用が11,000円かかります。
自筆証書遺言で行う場合、費用はかからずにすみますが内容の不備などにより無効とならないよう注意しましょう。
また新しく作成した遺言書が自分の死後発見されないといけませんので保管場所には注意しましょう。
遺言者の死亡後の遺言の取消
遺言が相続人や受遺者の詐欺や脅迫によって作成された場合、その遺言を取り消すことができます。
また遺言の内容に不服がある相続人は裁判所にその取消しの請求を行うことができます。
しかし、その遺言が取り消されるかどうかは裁判所の判断によります。
遺言の内容に抵触することがあった時
例えば「自宅を長男のYに相続させる」という内容の遺言書があったとします。
そして遺言者は生前に必要になりその自宅を売却しました。
この場合、長男に相続させるという遺言の内容はどうなるのでしょうか。
遺言書の効力が発生するのは遺言者が死亡した時からです。
生前に行った行為または事実で遺言書の内容と抵触する部分に関しては、その内容を撤回したものとみなされます。
まとめ
遺言書の撤回、内容の変更は何度でも行うことができます。
遺言書は後に作成されたものが優先となるからです。
なので日付は必ずはっきりとわかるように記載するようにしましょう。
遺言書に書いて効力があるものは法律で決められています。
しかし法的な効力はなくても遺された方へのメッセージとして遺言書に「想い」を記しておくことはとても大切です。
遺された人たちはどうしてあなたがそのような内容の遺言書を書いたのか理解することができ、あなたの気持ちに寄り添うことでその遺言の内容を受け入れやすくなります。
またあなたの「想い」を知ることで相続人同士の不要な争いを避けることができます。
「死」という悲しい出来事がおきた最中にある相続。