遺言書はなぜ必要か?
最近は財産額の多寡にかかわらず、相続時の遺産分割をめぐるトラブルが増えています。
遺産額が5,000万円以下の事案でもなんと77%が遺産分割を巡る裁判による紛争へと発展しています。
これは社会情勢の変化と権利意識の高まりによりそれぞれが自己の権利を主張するようになったことも原因ではないかと考えられます。
さらにインターネットの普及により誰でも手軽に瞬時に情報を集めることができるようになったことで自分がどれくらい相続できるのか調べることができるようになったのも要因ではないかと思います。
ただインターネット上の記事は全て正しい内容のものばかりというわけではなく、また個々の状況にもよって相続の内容は変わってくることもあるので自己で判断せずに専門家へ相談されることをおすすめします。
最近では士業や金融機関なども無料で相談を行っているところが増えてますのでそういったところを利用するのもいいでしょう。
また遺言書を作成していない方から「我が家が家族円満だから争族にはならないし遺言書は必要ない」というお話を耳にします。
しかしそれは被相続人の方がいるから家族が円満に過ごせるのであって、被相続人の死後は家族の関係が変わってしまうこともしばし見受けられます。
遺言書がなく「争族」に発展してしまう主なパターンとして被相続人の財産が土地と家屋だけだった場合などがあげられます。
金銭など分割可能な財産ならあまり問題になることは少ないかも知れませんが、土地や家屋など分割できない財産の場合「共有」という形で財産を相続するかそれらを売却して金銭に換価し分割するというかたちになります。
そうなってしまうと残された配偶者や元からそこに住んでいた子などは家に住み続けることが困難になってしまいます。
そういった「争族」争いによる家族関係の破壊を予防するためにも「予防対策」として遺言書を作成しておいた方がいいでしょう。
ここでは特に遺言書を作成しておいた方がいいケースを挙げておきます。
・相続人以外の人(内縁の妻や世話になった人)に遺産を遺したい時
・特定の人に遺産を多く残したい時
・相続人から廃除したい人がいる時
・相続人にしたい(認知したい)子がいる時
・遺言執行者を指定したい時
なお、民法で規定されている法定相続分はあくまでも目安です。
実際の相続では、相続人それぞれの個々の事情なども考慮されるため遺産分割により法定相続分と変わることもあります。
遺言書に書いて効力があるものは法律で決められています。
しかし法的な効力はなくても遺された方へのメッセージとして遺言書に「想い」を記しておくことはとても大切です。
遺された人たちはどうしてあなたがそのような内容の遺言書を書いたのか理解することができ、あなたの気持ちに寄り添うことでその遺言の内容を受け入れやすくなります。
またあなたの「想い」を知ることで相続人同士の不要な争いを避けることができます。
「死」という悲しい出来事がおきた最中にある相続。少しでも遺された方があなたの思いに寄り添いあなたの想いを受け止め、前向きに生きていける遺言になればと思います。