目・耳・口が不自由な人が遺言書を残す方法-公正証書遺言
先日ご親族で目が見えない方が遺言書を残したいと言っているのだけれどもというご相談を頂きました。
目が見えないということは自分で遺言を書くことは難しいですよね。
遺言書の種類は現在普通方式のものが3種類、特別方式のものが4種類ありますが、その中で目が見えない人でも残せそうな遺言は2種類あります。
その中でも一般的に利用されているのは「公正証書遺言」です。
公正証書遺言は遺言者がその内容を公証人に口授し、公証人がそれを文書にまとめ、公正証書遺言として作成します。
そしてその公正証書遺言を作成後、遺言者及び証人の前で読み聞かせ、その内容を確認します。
これら一連の流れにより遺言書の正確性および内容をを遺言者および証人により確認します。
一般的には公正証書遺言を作成する時、遺言者はその遺言書に署名、押印をします。
しかし目が見えない方はどうするのでしょうか。
この場合、公証人が遺言者の氏名を代署し、署名できない理由を付記して職印を押印するという方法で対応しています。
少し余談になりますが、公証役場に提出する書類の中に不動産が含まれる場合、固定資産税納税通知書もしくは固定資産評価証明書が必要になります。
役所で発行してもらうことができるのですが、代理で行う場合通常「委任状」が必要になります。
しかし目が見えない方が委任状を書くことが難しいですよね。
私は今回同居する家族に委任状を書いて頂き、目が見えないことにより委任状が書けない旨を代筆するという旨を記載して頂くことで役所で取得することができました。
次に耳の聞こえない方はどうでしょう。
この場合、「自署」ができるので自筆証書遺言で作成することも可能ですし、「正確性」「確実性」を担保するため公正証書遺言で作成したい場合、公証人が筆記した内容を口頭で読み聞かせるかわりに通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、読み聞かせることができるとしています。
手話などが利用されるのかもしれませんね。
また口がきけない人も同様、自筆証書遺言もしくは公正証書遺言により通訳人を交えて作成します。
いずれにせよ、ご本人様の状況も考慮し、一度専門家や公証役場へご相談されてみてもいいかもしれませんね。
「口のきけない者」「耳が聞こえない者」については、民法969条の2において次のように定められています。
(公正証書遺言の方式の特則)
第969条の2 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第2号の口授に代えなければならない。この場合における同条第3号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第3号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前2項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
口がきけない人が秘密証書遺言を作成する場合
遺言者は通訳人を介して公証人と証人の前でその証書は自分の遺言であることと、氏名と住所を申し伝えます。
そして公証人はそのことを封筒に記載します。
上記のとおり申述により行わない場合、遺言者は公証人、証人二人の前で封筒に自書しなければなりません。
遺言者が封筒に自書した場合は公証人はそのことを封筒に記載します。
遺言書に書いて効力があるものは法律で決められています。
しかし法的な効力はなくても遺された方へのメッセージとして遺言書に「想い」を記しておくことはとても大切です。
遺された人たちはどうしてあなたがそのような内容の遺言書を書いたのか理解することができ、あなたの気持ちに寄り添うことでその遺言の内容を受け入れやすくなります。
またあなたの「想い」を知ることで相続人同士の不要な争いを避けることができます。
「死」という悲しい出来事がおきた最中にある相続。