自筆証書遺言の作成方法・注意点、メリット・デメリット【動画あり】

自筆証書遺言の作成方法・注意点、メリット・デメリット

自筆証書遺言とはその名のとおり「自筆」で「手書き」で書く遺言書のことです。

平成31年1月31日民法改正・施行により、今まで手書きで作成していた財産目録をパソコンやワープロで作成したり不動産の登記事項証明書や預貯金通帳のコピーを添付することが可能となりました。

今まで財産について手書きで書く時、不動産は登記事項証明書記載通りの表記で、預貯金の指定が関しては金融機関、支店、口座番号を正しく書く必要があり、誤字・脱字などにより遺言の内容が無効になるということもありました。

パソコンなどで作成したりコピーの添付ができるようになり、自筆証書遺言作成の利便性がすごく上がったように感じます。

それでは自筆証書遺言作成のポイントをお伝えします。

また遺言書を書く時の注意点や公正証書遺言と比べてのメリット・デメリットをお伝えします。

自筆証書遺言の作成の 8箇条

1.全文を自書で書く

表題は「遺言書」「遺言状」「遺言」どれでもかまいません。

本文、日付、氏名すべて自筆で書きます。

作成した年の記載は西暦でも和暦でもどちらでも大丈夫です。

しかし日にちの記載に関してはよく手紙などで見る「〇〇年〇〇月 吉日」などというふうに書いてはいけません。

かならず、〇〇年〇〇月〇〇日ときっちり書きましょう。

 

日付の要件を満たさず遺言が無効となった事例
1.「昭和四拾壱年七月吉日」では日の特定ができないので無効である。
2.年月日が特定し得る記載でなければいけないので年月のみの記載では要件を満たさない、(東京地判決平26・4・25)

 

遺言書が何通もある場合はあとの日付のものが有効になるよ。


署名に関しては
芸名や作家さんなどはペンネームであっても一般的に本人であることがわかれば大丈夫とされています。

自分の本名で書く場合はきちんと「姓」と「名」を書くようにしましょう。

捺印は実印が望ましいとされていますが、認印や拇印でも有効です。

捺印する場所は「自署のあと」「訂正箇所」「財産目録(全ページ)」「遺言書が数枚になる場合は契印(割印)」「封筒」です。

 

2.用紙

ペン メモ

用紙に関してとくに指定はありません。変な話チラシの裏に書いたとしても他に不備がなければ無効になることはありません。

ですが、後々チラシの裏に書いたなんて本気じゃなかったんじゃないかと争いになることもあるかもしれないのでキレイな紙に書くようにしましょう。

一般的には便箋を利用されることが多いですが、コピー用紙など真っ白な紙でも大丈夫です。

保存に耐えられるものを選ぶようにしましょう。

 

3.筆記用具

筆記用具に関して、これを使ってはだめとされているものはありません。

けれども、えんぴつやシャープペンシルは改ざんの危険があるのでできればボールペンや万年筆で書きましょう。

そしてボールペンなどは長期間保管されることも考えられるので、できるだけインクが滲みにくいもので書いた方がいいですね。

遺言書は自分の意思を他の人に伝え、自分の死後その意思を他の人に実行してもらうことでその目的は完結します。

そのため誰が読んでもわかるきれいな字で書くよう心がけましょう。

4.保管方法

仏壇


自筆証書遺言を作成し自宅に保管される場合は自分の死後、誰かに発見されなければなりません。

その保管場所として一般的にはたんすの中や仏壇などが多いと聞きますが、発見される時のことも考えて保管場所を選びましょう。

そして遺言書は紙に書いて封筒に入れますが、その中に自分の筆跡がわかるよう遺言書とは別に自分の手書きで書かれたメモ等を残す方がいいですね。

過去実際に、発見された遺言書が故人によって書かれたものなのかという相続人どうしの争いがおこり、裁判にまで発展し、筆跡鑑定まで行ったケースがいくつかあります。

令和2年7月10日から法務局における「自筆証書遺言の保管制度」が開始されました。全国の最寄りの法務局で保管してもらえるのでそれを利用するのもいいですね。

この制度は保管の為の申請手数料が3,900円かかりますが、「検認」の手続きが不要となるメリットがあるのでぜひ利用したいものです。

詳しくはこちらのページをご確認下さい。

「自筆証書遺言の保管制度」記事へ→

法務省:法務局における自筆証書遺言書保管制度について (moj.go.jp)

法務局で保管してもらえるのはとっても便利!

 

5.箇条書きにする

内容は項目ごとに番号をつけ箇条書きにするとわかりやすくなります。

 

遺言書見本

 

6.財産をはっきりと特定できるように書く

家


遺言書に記載する内容として財産を誰に渡すということを書きます。

この財産の記載方法に関して、どの財産かわからず、遺言書が無効になるケースがあります。

例えば不動産を長男Aに単独でゆずりたいという場合

「今住んでいる家を長男に相続させる」や「〇〇市の家を長男に相続させる」などの記載では、

場合によっては不動産の特定が困難になるケースがあります。

不動産の場合登記簿謄本に記載されているとおりに記載して下さい。

役場で発行される固定資産税評価証明書の住所でもいいのかというご質問を頂くこともありますが、登記事項証明書(登記簿謄本)と地目・地積・床面積などが違っている場合があります。

インターネットや郵送でも取得できるので、できるだけ登記事項証明書どおりに記載しましょう。

なお、平成31年1月13日に「自筆証書遺言の方式緩和」という新しい法律が施行され、財産目録に関しては自分で作成せず、登記事項証明書や預貯金の通帳のコピーを添付するだけでよくなりました。

とっても楽になりましたよね!

詳しくは

自筆証書遺言の方式緩和へ→

法務省:自筆証書遺言に関するルールが変わります。 (moj.go.jp)

財産目録はコピーの添付でも大丈夫!

財産目録はすべてのページに署名・捺印が必要なので忘れないようにしましょう。

7.封筒に入れる

遺言書は必ず封筒にいれなければいけないという決まりはありません。

けれども秘密の保持や改ざんを防ぐ、汚損などから守る意味でも封筒に入れて保管することが望ましいでしょう。

封筒に表には「遺言書」と書き、裏には作成年月日と署名をし、押印します。

封印の印と署名・押印の印は、遺言書に用いた印鑑を使用します。

自筆証書遺言をご自宅などで保管される場合、死後、その保管者や発見者が家庭裁判所に届出て「検認」の手続きをしなければなりません。その前に開封してしまうと5万円の過料に処せられるので「本遺言書は、遺言者の死後、未開封のまま、家庭裁判所に提出すること」と記しておきます。

 

遺言書封筒

8.加除、訂正は決められた方法で

遺言書を手書きで書くと、書き間違いを修正をしたい時がありますよね。

その場合、自筆証書遺言には訂正の仕方にもルールがあります。

例えば書き間違えた字を訂正したい時は、間違えた文字を線で消し、押印し、「〇行目の〇字を訂正し、〇字加入(削除)」などのように欄外に訂正したことを記入し署名・押印しなければなりません。

この決められた方法で加除・訂正しないと遺言自体が無効となってしまう可能性があるので少しめんどうですが、新しく書き直されることをおすすめします。

天秤 裁判所

 

遺留分...なんだか聞いたことがないし難しい言葉だなぁ。

 

遺留分とは

簡単に説明すると、最低限度法定相続人に残さないといけないとされている財産のことです。

例えば相続人が長男A、次男Bの2人だったとして、「全財産を長男Aに相続させる」という遺言を残したとしても次男Bには本来自分が法定相続人として相続するはずだった財産の1/2を請求する権利があるというものです。

これは全く財産をもらえなくて生活に困窮する相続人を保護する為の法律です。

よって遺言書の内容に書いたことが必ず全て実現されるという保証はないのですが、遺留分の請求を望まないのであれば「長男A夫婦は今まで介護をずっとしてくれたから」とか相続人の心情に訴えかける、遺言者の「想い」を遺言書に記載しておくことが重要です。(付言)

遺言書を見つけた相続人は自分が相続できる財産がなくても、遺言者の気持ちを理解することができ、納得しやすくなります。

 

遺言書には残された人への「家族みんなで仲良くして下さい」やお世話になった人に「今まで本当にありがとう。感謝しています」などのメッセージを残しておくのも大切なことです。

 

「付言」というかたちで残すことができるよ。

 

自筆証書遺言のメリット・デメリット

遺言書を作成する時、

一般的には

・「自筆証書遺言」

 もしくは

・「公正証書遺言」

で作成されることが多いです。

それぞれのメリット・デメリットを比較していきましょう。

自筆証書遺言と公正証書遺言比較
種類 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 本人が自筆する 公証人が公証役場で口述筆記
証人 不要 2人必要
メリット コストが安い
手軽に作成できる
内容を秘密にできる
遺言の内容が確実に実行される可能性が高い
公証役場でも保管されるので紛失や偽造がない
デメリット 不備により無効となる場合も
発見されない可能性がある
紛失や偽造・変造の可能性がある
手続きに費用がかかる

 

自筆証書遺言は費用をかけることなく手軽に作成できるというメリットがあります。

しかしご自宅に保管される場合発見されない可能性や一部の相続人により破棄、隠匿される可能性もあります。

もし遺言書を破棄または隠匿すれば法律上相続権を失うことになります。

また自筆証書遺言作成後、ご自宅で保管される場合、死後家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければなりません。相続人や受遺者の負担になるので残された人のことを考えるとできれば公正証書遺言として残される方がいいでしょう。

検認について詳しくはこちら→

公正証書遺言について詳しくはこちら→

 

自筆証書遺言はトラブルになることもあることから出来るだけ不備がないように専門家に相談するか、保管に関しても法務局での保管制度を利用された方がいいかも知れませんね。

自筆証書遺言、公正証書遺言それぞれメリットやデメリットがあるので自分に合ったものを選ぶようにしましょう。

また遺言書の個別具体的な書き方は別のページでご説明します。

最後までお読み下さりありがとうございました!
 
気持ちの伝わる遺言書を
遺言書に書いて効力があるものは法律で決められています。

しかし法的な効力はなくても遺された方へのメッセージとして遺言書に「想い」を記しておくことはとても大切です。

遺された人たちはどうしてあなたがそのような内容の遺言書を書いたのか理解することができ、あなたの気持ちに寄り添うことでその遺言の内容を受け入れやすくなります。

またあなたの「想い」を知ることで相続人同士の不要な争いを避けることができます。

「死」という悲しい出来事がおきた最中にある相続。

少しでも遺された方があなたの思いに寄り添い、あなたの想いを受け止め、前向きに生きていける遺言になればと思います。

 

 

 

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